ユナイテッド93
![]() | ユナイテッド93 (ユニバーサル・ザ・ベスト第8弾) (2007/09/13) シェエン・ジャクソン.ジョン・ロスマン.クリスチャン・クレメンソン 商品詳細を見る |
今日は「ユナイテッド93」を観てきました。まずはこの事件で命を落とした方の冥福をお祈りします。それはそれとしてこの映画は事実を元にしたフィクションですので、そういう観点でいろいろ語ってみたいと思います。
第一印象としてはとにかくもの凄い映画でした。「プライベート・ライアン」を観た時にはもうこれ以上リアルな映画はないだろう、これほどまでに臨場感を覚える映画は(もちろん映画的臨場感ですが)もうないだろう、と思ったものでした。しかしこの「ユナイテッド93」はそれに匹敵するほどの迫力と臨場感を持った映画でした。単にドキュメンタリータッチなだけではありません。それと知られぬように実に細やかな計算で映画的演出がなされています。それによって観客があたかも自分たちも乗客の一人であるかのように錯覚させていきます。これは映画を知り尽くしていないとできないことです。そのリアリズムを崩さぬよう、登場するのは全て無名の役者ばかりです。中には本物の管制官の方(要するに素人)も出演しています。それなのに皆さん演技が達者です。アメリカ映画の役者の層の厚さには驚かされます。また演技指導も凄いのでしょう。少しでも大げさな演技であったり、下手な芝居があったら一瞬でこの映画は崩れます。しかし最後までそのような失敗は見られませんでした。これだけでも称賛に値することです。
映画はまさしく911に起こったユナイテッド機の墜落について、事実に基づきながら、内部ではこういうことが起こったのだろう、という推測を冷静に描いていきます。声高に政治的な主張は叫びません。それをしたらやはりこの映画は崩れていたでしょう。きれいごとと言われるかも知れませんが、テロリストたちも一人の人間として、乗客もまた一人の人間として、極限状況の中、公平に描かれます。この事件の政治的な背景よりも、この密室の中での確執こそがグリーングラス監督の興味を誘ったのではないでしょうか。
クライマックスは乗客たちがハイジャック犯に襲い掛かっていきます。この映画でも最もフィクション性の強いシーンです。どんな資料をひもといても、墜落の直前に機内で何があったのかは分かりません。だからこの展開にこそグリーングラス監督の主張が込められているのでしょう。最後の対決の構図は今現在の世界情勢そのものです。ユナイテッド機が、紛争の絶えない世界の縮図として描かれているのではないでしょうか。ともに操縦桿を奪い合いますが、互いに譲らないため、飛行機は墜落してしまいます。この世界の行く末を暗示しているようではないでしょうか。確かに乗客たちは自分の信じる正義のために戦ったのでしょう。しかしハイジャック犯たちもやはり自分の信じる正義のために戦ったのです。ともに自分が正義と信じる者同士が殺し合う。それが戦争なのです。それが今世界で行われていることなのです。人類はそれを止めることができるのでしょうか。グリーングラス監督にもその答えは見つからなかったようで、この映画はユナイテッド機が墜落するとそのまま終わります。願わくばこの結末を観た人達が、解決法を見つけて下さいと言わんばかりに、バトンは観客に委ねられたようです。
しかし私にも答えは見つかりそうもありません。もし私がこの飛行機に乗っていたとしても、話し合いで皆が助かるようにすることなど出来ない相談だと思ってしまいます。
この映画を観て、事実と違う、あれは陰謀だ、と指摘する向きもあるようですが、そういう方も自分が正義と信じるもののために戦っているわけで、まだまだ世界からは争いが絶えることはないのだな、と思ってしまいます。



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