スピード・レーサー
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たった今観てまいりました「スピード・レーサー」でございます。この映画はもちろん往年のアニメ「マッハGoGoGo」の映画化でありまして、当時アメリカでもスピード・レーサーというタイトルで放送されて人気を博し、あちらのファンも大勢いまして、以前から映画化の話はちらほらあったのですが、ついにウォシャウスキー兄弟によって実写映画化がなされたのでした。
本当のことを言うと当初はあまり観るつもりはなかったのです。なんだか予告の映像を観るとやたらキラキラして嘘っぽいし、主役の人も知りませんし、ウォシャウスキー兄弟にしても「マトリックス」こそは好きですが、その後のシリーズ2作目3作目と進むに連れて、だんだん私の好みでなくなっていったからです。それでも一応懐かしい気持ちもありますし、リアルタイムと言っていいのか分かりませんが再放送は子供の頃に見てましたので、やっぱり気にはなるものです。そんなに夢中になって見ていたわけではないのですが、どんな感じになっているか観に行きました。結論から書きますと、これは私の中ではかなり問題作となりました。
何から書けばいいのでしょう。全体的な印象としてはとにかく映像もテンポも情報を詰め込みすぎています。レースシーンだけでなくすべてのシーンで背景の細かい所まで凝っていたりして、そちらに気を取られていて話に集中できません。おまけに冒頭からレースと回想が矢継ぎ早に畳み掛けられ、どっちかをじっくり見せてくれよ、と私の脳は悲鳴を上げそうになりました。ここらへんはちょっと年配の観客にはかなり厳しい作りになっています。
しかし考えてみればアニメの映画化というのは難しいものです。いらないキャラは省きたいところでしょうが、それでは原作のファンが怒るでしょうし、では全員登場させたらそれなりの役割を与えなければならないし、それでは時間がいくらあっても足りないし、ということでウォシャウスキー監督は一通り全部やることにしてその分ボリュームを圧縮しようとしたのではないでしょうか。
その映像ですが、というか世界観と言ったらいいのでしょうか、近未来とも古き良きアメリカとも取れる独特の映像になっています。ちょうど60年代の日本のアニメである「マッハGoGoGo」がそれまでの生活感や汗臭さ漂うアニメから脱却してアメリカのアニメやドラマや映画を思わせるような豊かで洒落た世界観を確立したように、この映画では古き良き豊かなアメリカの無邪気さと、おもちゃ箱をひっくり返したような騒々しい未来像が共存しています。色彩感覚の趣味とかは置いておいて、方向性としては非常にオリジナルをリスペクトしていると思います。
私はアニメのストーリーをほとんど覚えておりませんので、そちらはよく分からないのですが、もっとシンプルなストーリーでも良かったのではないかと思います。というのも前半あたりの主人公の影の薄さがどうも気になるのです。もっと主人公を立てて、兄の影を背負っていたのが吹っ切れて一人前のレーサーに成長するというお話を中心にして、陰謀やら他の要素はもっとウェイトを落として欲しかったです。なんだか脇役の小芝居ばかりに時間を割いていて主人公の見せ場は運転席で座ってるだけという感じがしてしまいました。
また「いちゃもんモード」に入りそうになっていますが、決して悪いところばかりではないのです。面白いところや好きなところはいっぱいあります。ただその分量やバランスや配置に納得がいかないところがあります。レースの最中に回想するというパターンが非常に多く、これもひょっとしたら日本のアニメや漫画をリスペクトする余り、その方法論に倣っているのかも知れませんが、なんともテンポが悪く感じました。もうレースが始まっているわけですからそっちに集中したいのに、敵が接近するにつれその敵がどのように抱き込まれたかの回想が入ったりするのです。またその回想があまり面白くない上に長かったりするので余計にイライラします。こういうのはサム・ライミとかが上手いんですけどね。
バランスと言えばやたら格闘シーンとかが長かったのもどうかと思いました。監督が好きなのは分かるんですが、夜の襲撃シーンとかサラッとやればいいじゃないですか。なんで「マトリックス」みたいにわざわざカンフーアクションにするのかよく分かりません。その後のレースの最中に待ち伏せされての集団でのアクションも長かったです。というかここは映像的に遊びすぎていてどうにもついていけませんでした。アニメや漫画のテイストをいかに実写で出すかという試みをしているのは分かるのです。しかし私はどうにもシーンごとの映像の遊びを楽しむというより、ドラマの展開の遅さというか停滞が気になってしまったようです。
肝心のレースシーンもやたら車の挙動が軽いのでのっけからちょっと不満を持ってしまったことを告白しなければなりません。もうタイヤのグリップ率が0です。車が走っているというよりボブスレーが滑っているようです。あるいはゲームの「ワイプアウト」みたいと言っていいかもしれません。これを見て私は、ああスピード感だけでなくタイヤのグリップ感と言うか、摩擦がちゃんとあってそれを感じさせながら車が加速していくのが(少なくとも私個人にとっては)大事なのだな、と改めて思うのでした。アクションそのものもジャンプしたり回転したりしているばかりです。いや本当にクライマックスまでそんな調子です。敵の攻撃をジャンプでかわし、回転してぶつかったら相手の車がクラッシュするという繰り返しです。この工夫の無さは本当に「マトリックス」と同じ監督が撮ったのか疑わしく思えてくるほどです。
いかんいかん、ここまで悪口しか書いてないぞ…。確かに不満点はいっぱいあるのですが、観終わってみると不思議と充実感というか、楽しかったなあという感じがしてくるので不思議です。きっとここに出てくる登場人物が嫌いになれなかったからだと思います。なんだかんだで最後のレースで主人公が今までのことを回想するくだりとかは分かっていても感慨深いものがあります。私が特別こういうベタな展開に弱いということもありますが。基本的に嫌いではないのですが、ここがもっとこうだったらなあ…、と注文をつけたくなるところがいっぱいある映画なのです。あとやっぱり昔懐かしい音楽がかかったり、マシンのデザインや装備がちゃんとオリジナルに準拠しているところはいいですね。偵察する小さい飛行機を使わなかったのは不満ですが。
なんだかこの映画は情報量が多すぎて何度も観なければいけないような気がしてきました。あるいは何日か経ってから「やっぱり最高だったんじゃないか?」と意見が変わる種類の映画かもしれません。ここまで書いておいて無責任ですが、観終わった直後ということであまり咀嚼できていないということかも知れません。そういう意味で問題作と冒頭に書いたのでした。



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