ランボー
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そんなわけで「ランボー」でございます。一作目です。原題は「FIRST BLOOD」と言いまして、最初の血、どちらが先に手を出したか、みたいな意味らしいです。しかしアメリカではこの地味なタイトルのせいで興行的に奮わなかったのではないかと言われ、邦題にならって2作目からはランボーの名前が入るようになりました。
と言っても日本でもめちゃヒットしたというわけではないようです。お正月映画だったのですが、同時期公開にスピルバーグ監督の「E.T.」がありましたので、そちらにお客さんが流れたようでした。しかし私は「E.T.」は観ずに「ランボー」を観ることにしました。「E.T.」はなんだか観る気がしなかったのです。スピルバーグ好きの私にしては珍しく、今に至っても観ていません。
そんなことより「ランボー」です。とにかくアクションが凄いという話を聞きましたので、ワクワクしながら劇場に行ったのですが、痛快なアクションというより、リアルなバイオレンスがひたすら衝撃的だった印象が強いです。まず冒頭からして何があるわけでもないのです。ランボーが町にきたら、パトロールしていた警官に職務質問され、態度が不審なのでしょっぴかれてしまうところから話は始まります。
そのうち警官たちの仕打ちは激しくなり、どうやらベトナム帰りらしい主人公は戦場の記憶をフラッシュバックさせ、ついにキレて逃げ出してしまうわけです。確かにアクションは激しいです。でも警官がやりすぎたと言ってもランボーの反撃はさらに激しいのです。カッコいい! などと言って浮かれて観る気分にはなれませんでした。何ともやりきれないムードが漂っています。そんなムードは山を捜索していた警官たちが罠にかかるシーンで頂点に達しました。木の杭が足に突き刺さり、身動きできず、助けを求めて叫ぶのです。もう私の気分は完全に警官たちに同情的です。もともと悪いのはブライアン・デネヒーです。なのに部下たちがこんな目にあって、何とも理不尽な思いで観ていました。
そんなランボーに対し、州兵が出動してきたり、だんだんと争いは激しさを増して行きます。前半のゲリラ戦からエスカレートし、ヘリコプターや爆発、マシンガンの乱射など、アクション映画としての見せ場が充実して行くと、私も安心して観れるようになりました。しかし勧善懲悪な物語では決してありません。しまいにはブライアン・デネヒーとの一騎打ちで、ついにランボーがデネヒーを仕留めるかという展開になります。ここで撃ち殺してランボーが勝ってもさすがに喜べません。どうなるかと思っていたらかつての上司トラウトマンが現れ、ランボーを説得するのでした。
私はちょっと意外に思いました。スタローン主演のアクション映画なのに、クライマックスがバトルシーンではなく、彼の泣きの芝居なのです。しかし凄い熱演です。ベトナムから帰ってきても仕事なんか無いんだ、という話から始まり、戦友が地雷に吹っ飛ばされ、その足が見つからないと叫ぶ一連の演技は圧巻です。何度も書いてますが、本当にシルベスター・スタローンは役者として過小評価されていると思います。ここで語られる戦場の悲惨さは「ランボー 最後の戦場」に通じるものがあります。映像で見せていないだけで、すでにあのような地獄絵図をランボーはベトナムで体験してきたのです。それなのにアメリカという国は俺たちに何もしてくれない、というこれは魂の叫びなのです。ひとしきり心情を吐露するとランボーはやはり連行されて行きます。そこで例の歌がかかって終わり、なのですが、かなり後味の悪い映画だと思ってしまいました。単なるアクション映画とは思えません。
歳を取って再見するたびにその思いは強くなって行きます。見返すとブライアン・デネヒーの気持ちも分かるようになっていくのです。デネヒーとしては市民を守る責任があり、不審者に対して毅然とした態度を取るのは仕方のないことです。もちろんランボーもこんな仕打ちを受けてキレるのは無理もないところです。ランボーを育てたトラウトマンこそが真の悪ではないかとも思えますが、彼にしても自らの職務に忠実なだけで、またランボーの唯一の理解者であることは間違いありません。この映画は誰が正義で誰が悪と単純に分けられるようなお話ではないのです。
聞く所によるとスタローンは「タクシー・ドライバー」を観て「こんな映画を作ってはいけない。もっとベトナム帰還兵に理解ある映画を作らなければ」と思って「ランボー」を製作したそうです(ごめんなさい「ディア・ハンター」だったかも)。しかしテーマに真摯に取り組むことによって、根底に流れるものは「タクシー・ドライバー」とそう違わないものになってしまいました。ひょっとしたらそのリターン・マッチとして「ランボー/怒りの脱出」以降を作ったのかという気もしてきます。
後に単純でマッチョなヒーローアクションをランボー映画と揶揄するようになりましたが、この一作目にはそのような要素はありません。ひたすらリアルで痛ましい暴力描写に満ちています。確かにランボーは強く、暴れ回るのですが、痛快というよりも悲しい姿に見えます。さすがにこれでは悲惨すぎたと思ったのか、次回作ではこのランボーがヒーローとなって帰ってきます。ちょっと方向転換しすぎとも思えるのですが、その話は次回に譲ることにしましょう。



