バーティカル・リミット
![]() | バーティカル・リミット クリス・オドネル、ビル・パクストン 他 (2007/04/18) ソニー・ピクチャーズエンタテインメント この商品の詳細を見る |
先日書いた「恐怖の報酬」にちなんで、雪山CGアクションの「バーティカル・リミット」を紹介します。非常に微妙な映画で、何かきっかけでもないと今日び語られることのないような映画なのですが、高額報酬をもらって雪山で遭難した人を助けにいくのに、救助隊がニトロを持っていく(それで爆破して救助するんだったかな? 詳細は忘れました)という設定がまあ「恐怖の報酬」を意識しているというか、よく言えばオマージュを捧げているので、ついでに書いてみます。ちゃんと別働隊がニトロの爆発で死ぬというシーンもあります。ただオマージュの捧げ方はあまりうまくないような…。まあ、気を取り直して行ってみましょう。
公開当時、予告を観た私はこれは大迫力のスペクタクルアクションだから絶対大画面で観た方がいいだろう、と思って迷わず劇場に行きました。ところが冒頭の鷹が飛んでいるシーンのあまりに稚拙なCGで一気に不安な気持ちでいっぱいになりました。結論から書いてしまいますとこれはマトモなアクションエンターテインメントと思ったらツッコミどころだらけの馬鹿映画というか、そういう見方でないと楽しめない類いの映画だったのです。私は何とか途中でそれに気付いて見方を切り替えたので、まあまあ楽しめました。
何がマズいと言うとやはりマーティン・キャンベル監督のアクション演出が、サービス満点で分かりやすい構図を使って描こうとするのは分かるのですが、あまりに分かりやすすぎて、興醒めしてしまうところです。冒頭で書いたニトロを使ったシチュエーションにしても、「恐怖の報酬」には全てに必然性があったのですが、この映画ではただ爆破シーンを撮りたいからというだけでさして必然性を感じません。事実私もなんでニトロなんか持って行ったのか忘れてしまっています。アクションシーンの画作りも、平面的で書き割りっぽく、なんだかコントみたいです。それでいて救出隊がヘリから降りるところもわざとらしくアクシデントを起こして強引にサスペンスを高めようとして、やりすぎだろと醒めてしまいます。ほんのちょっとのバランスの違いだと思うのですが、キャンベル監督はどこも微妙にやりすぎてしまい、笑いを誘う方向へ行ってしまっているようです。
ただし見せ場そのものはさすがに迫力があって、凄いとは思わせます。まあそれすらダメだったら目も当てられないので当たり前ではありますが。何がダメなのかといろいろ考えると、やはり娯楽映画だからと余計なものを削ぎ落とそうとして、娯楽に必要なものまで削ぎ落としているという感じです。それは何かというと、人間ドラマとは言いません。確かにこの映画にはドラマなどほとんどないのですが、それは恐らく最初から不要だと思います。
きっと前振りというか、これがこうなるとこうなるぞ、という事前の情報がまるでないので、観ているこちらが今どんなシチュエーションなのか分からず、ハラハラのしようがないのだと思います。全ての見せ場が突発的で唐突なのです。それが羅列されているという感じです。やはりアクションが派手なだけでなく、そこへ持って行くまでの盛り上げ方が大事なのでしょう。こういうのが一番うまいのは「ダイ・ハード」だと思いますが。
マーティン・キャンベル監督は「マスク・オブ・ゾロ」とか007シリーズとかをよく撮っている人で(この間の「007/カジノ・ロワイヤル」もこの人です)、ひょっとしたらそういうのと同じノリで撮ってしまったのではないでしょうか。おそらくこんなノリでも主人公がジェームズ・ボンドだったら成立してしまうと思うのです。しかしクリス・オドネルとかビル・パクストンとか、スコット・グレンなど、ようするに普通の人がこんなアクションをしてしまうので、えええ? と思ってしまうということではないのでしょうか。と、ふと思ったことを書いてみましたが、全く違うかもしれません。
何にしろ、肩の力を抜いて、CGアクションショーを観るつもりで観たら、それほど悪くない映画かもしれません。間違っても「クリフハンガー」みたいなのを期待してはいけません。あれはあれで大雑把な映画でしたが、この映画はそれ以上ですので。




