生まれてから今まで観てきた映画全部

タイトル通り、生まれてから今まで観てきた映画全部についての感想を述べたいと思います。

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ウルフガー

Author:ウルフガー
業界の末端に携わっている映画好きです。名前の由来は「ナイトホークス」より、ルトガー・ハウアー扮するテロリストから勝手に頂きました。

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デス・プルーフ in グラインドハウス

デス・プルーフ プレミアム・エディションデス・プルーフ プレミアム・エディション
(2008/02/22)
ヴァネッサ・フェルリト、ローズ・マッゴーワン 他

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さてぶっ続けで幕間の予告が始まります(何だかわけの分からない食べ物のCMも入ります)。うろ覚えですがナチ収容所の狼女みたいな映画、これはたぶんイルザや女体拷問人グレタのパロディでしょう。何をやってもいけないというホラー映画「Don't」、そして一番ヤバくて傑作だと思ったのが「感謝祭」という映画です。これもホラーですが、本当に昔ありそうな感じのホラーで爆笑しました。「マニアック」とかあの辺りでしょうかね。

続く「デス・プルーフ」はクエンティン・タランティーノらしく、冒頭から会話が面白い映画です。女たちが馬鹿話をしながら適当に遊ぼうかと思っていたら、殺人鬼に出会って…、という典型的なホラー映画なのですが、最初の殺人が起こるまでが長過ぎます。大げさでなくちょっとうとうとするほどだと思います。さすがにセリフはよく練られているのですが、バランスが悪い感じがします。しかし、それこそがタランティーノ流の、グラインドハウス映画へのリスペクトなのでしょう。当時こういった前半がえらく退屈な映画はよくありました。それを再現しているのです。これが意図的なのは例によって一巻消失のネタをやるのですが、その後も依然として事件が起こっていないことでよく分かります。「プラネット・テラー」と逆のアプローチですね。どんだけ前半退屈なんだよという感じです。しかし「プラネット・テラー」を観て、表面的には昔のB級映画をなぞっているけど中身は完全に現代の映画だなあ、と少し不満を持った私は、そういった構造まで再現した「デス・プルーフ」を観て、やっぱりそこは再現しなくていいか…、と考えを改めたのは言うまでもありません。

殺人鬼は元スタントドライバーでしたっけカート・ラッセルです。この人が「バニシング・ポイント」などのカーアクション映画のうんちくを語りながら女を誘い、助手席に乗せて、暴走して殺すのです。その車が撮影用にフレームを強化したデス・プルーフ(耐死構造)の車なのです。そいつでもって主演かと思われた女たちの車に正面から激突し、一瞬で全員を殺すシーンは大迫力です。ここまでで大体映画の半分くらい、まるで「サイコ」で金を持ち逃げした女が殺された時のような驚きがあります。一体この映画これからどうなるんだ? そういう感覚です。

カート・ラッセル自身もケガを負ったのですが、そのせいで事件は事故と判断されてお咎め無し、すぐに次の獲物を物色します。ここで出て来るのが「キル・ビル」でユマ・サーマンのスタントダブルを務めたというゾーイというスタントウーマンです。彼女が本人役で登場という大抜擢。女4人組が、売りに出されたダッチ・チャレンジャー(「バニシング・ポイント」に使われた車)を試乗しようという話です。そこでゾーイがボンネットに乗ってみたいと言いだしたものだから大変。その姿を観たカート・ラッセルは、ボンネットにゾーイを乗せたまま走る車を追いかけて、体当たりを食らわせるのです。実際観てもらえれば分かりますが、このくだりのスタントは壮絶すぎてちょっと言葉がありません。もちろん安全対策は施しているのでしょうが、これだけのスピードで走ったら車なんてどう動くか分かりません。極端なことを言えばハンドル操作一つ間違えただけで横転する恐れもあります。そうしたらボンネット上のゾーイはほぼ間違いなく死ぬわけで、よくこんな危険なシーンを撮ったものだと思います。

あまりネタバレするのも何ですのでそこから先の展開は観てのお楽しみにしておきましょう。しかしアクションヒーローを演じていた頃のカート・ラッセルからは考えられないような自由奔放な演技に抱腹絶倒は間違いなしとだけ言っておきます。The Endが出るタイミングも凄まじすぎます。前半がこれで後半がこれって明らかに映画として壊れているのですが、先ほども言ったとおり、ロドリゲスは一つの映画としてまとめて昔のB級映画風のエッセンスでパッケージしたのに対し、タランティーノは内容そのものを破綻させて昔のB級映画風味を再現したのです。前半は退屈だったのですが、後半のテンションの高さ、痛快さ、爽快感は「デス・プルーフ」の方が上でしょう。この上映順は実に正しいと言えます。

しかし二人ともどんだけラス・メイヤーが好きなんだよ、と思いました。特に「ファスタープッシーキャット キル!キル!」に対するオマージュは、「プラネット・テラー」のオープニングや、「デス・プルーフ」で女たちの一人が来ているTシャツから明らかです。もちろん女が男をボコボコにするというのもそうです。私はこれに限らず映画の元ネタが何だという知識はあまりないので、普段そういうことを書かないのですが、珍しくそういうのが分かったので嬉しくなって思わず書いてしまいました。

プラネット・テラー in グラインドハウス

プラネット・テラー プレミアム・エディションプラネット・テラー プレミアム・エディション
(2008/03/21)
ジェフ・フェイヒー、ステイシー・ファーガソン 他

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六本木でUSAバージョンが期間限定で上映されていたので観てきました。ロバート・ロドリゲス監督とクエンティン・タランティーノ監督の共作というか二部作「グラインドハウス」です。グラインドハウスというのはあちらでドB級映画を二本立て三本立てで上映する二番館のことで、70年代に場末の映画館で映画を観ていた人なら何となく雰囲気は分かると思います。でも日本で東映の二本立て観てるのよりもっと場末なんだろうなあ、とちょっと想像を膨らませたりします。

まず始まる前に、おそらく配給会社がつけたであろう注意書き「本編中のノイズやキズ、フィルムの欠落は意図的なものです」うんぬんが表示され、そんなことをわざわざ断らねばならぬほど日本の観客は馬鹿と思われているのかとちょっと悲しくなりました。しかし信じられないことに、実際にいるのでしょうね、クレームをつける人が、いやしかしこの映画を観にくる人でいるか? とも思うのですが、考えてもしょうがないですね。こんなことは。

始まったらいきなり昔っぽい映像で、予告のお知らせ、そしてフェイク予告編「マチェーテ」が始まります。ロドリゲス映画の常連ダニー・トレホが暴れ回る安っぽい(でも実はド派手です)アクション映画です。70年代には黒人のヒーローが暴れ回る渋い映画が流行ったのですが(「シャフト」とか)、それのメキシコ人版みたいなノリです(「メキシコ人をなめるな」というセリフが最高)。映像だけでなく、ナレーションやロゴが昔っぽくて嬉しくなってきます。こういうのって若い人はどう楽しむのでしょう。当時の映画を体験したことのない人の感想が聞いてみたいと思います。でも映像だけでも馬鹿っぽいし、私自身パロディの元ネタ知らなくて映画観て笑うこともありますから、別に関係ないのかも知れません。そして恐ろしいことに私が「グラインドハウス」の予告で観て楽しみだった映像がほとんどこの予告の中に入っていました。私が期待していたのは「マチェーテ」だったのか…。少し不安になったのですが、続く本編はそんな不安を吹き飛ばす大傑作でした。

一本目はロバート・ロドリゲス監督のB級ゾンビ映画「プラネット・テラー」です。正確にはゾンビでなく何かの感染者です。「28日後…」や「バイオ・ハザード」や「バイオ・インフェルノ」のアレですね。

感染がどんどん広まり、人が襲われ、その死体が生き返り、さらに騒ぎが広がっていく町で、ゴーゴーダンサーと伝説の男(何だか正体がよく分からない)のラブストーリーや女医と旦那の確執や、保安官の兄とバーベキュー屋を営む弟のレシピを巡る争いなど、様々な人間模様を絡めていきますが、大抵はありがちな設定をぶち込んだだけでおそらく全部ギャグでしょう。

とにかく全編を通じてハイテンションで、ゾンビの造型や撃たれた時の効果など、いきつくところまで行っています。久しぶりに「ブレインデッド」級のグチャグチャさです。グロいのが嫌いな人は注意して下さい。

最初のうちはスクラッチノイズやフィルム飛びは、当時の雰囲気を再現するだけのお遊びかと思っていたのですが、映画が進むにつれて、うまいこと演出効果になっていると分かります。ショックシーンでわざとフィルムの状態を悪くすることでテンションを高めたり、アクションをさらに激しく見せたり、極めつけなのは濡れ場でフィルムが焼けてしまい、一巻焼失と断りが出て、次はもうストーリーがかなり飛んでいて、大量のゾンビに囲まれているクライマックスになっているという超展開を見せるところです。これには笑いました。誰なんだよお前という奴がいっぱい仲間にいるし。

グロいのですが、漫画的なノリなのでそんなに陰惨な感じはしません。全編を通して私が一番キツいと思ったのが、薬を打たれて手の感覚がなくなった女医がむりやり車のドアを開けようとハンドルに手を挟んだまま、転んで手首がグキッとなる瞬間でした。観た方は分かると思いますが。残酷描写も最初はショッキングだったのですが、だんだん表現が行き過ぎちゃってマヒしちゃう感覚と言うべきでしょうか。ブルース・ウィリス率いるゾンビ軍団が出てきた時にはもうグダグダな感じになっていた気もします(しかしそれこそが狙いのような)。

そしてローズ・マッゴーワンが失った片足にマシンガンを装着して大暴れするくだりになると、もうでたらめもいいところで、痛快ではあるのですが、お約束通りのルーティーンを消化しているだけにも思えます。でもキャラとしてはもの凄く魅力的です。脚が欠損しているだけでもアレなのですが、そこに言うなれば男性のシンボルの隠喩である銃を装着し、そこから発射する弾丸で男ども(まあゾンビなのですが)を殺していく姿は、もの凄く複雑なフェティシズムを感じます。わざわざ脚につけなくとも…と思ってはいけません。どういう仕組みで撃ってるんだよ…と思ってもいけません。ただただカタルシスを感じればいいのでしょう。

でもこれだけのご馳走を見せられても不満がないわけではありません。というのは、こういう話を真っ向からやってほしいのに、あえて馬鹿映画を作ってますよーというサインを前面に出しながら作られているのが非常に残念なのです。照れというのでしょうか。このレベルのB級映画が大好きなのに、このレベルのB級映画を撮る人とは思われたくないというような監督の複雑な気持ちが見えてしまいます(想像ですが)。実際70年代に流行った安っぽいホラー映画に比べるとこの映画は面白すぎます。当時の映画はこんなにカット割りとか早くありません。映像や要素はグラインドハウス映画を再現しても、内容は再現できていないのです。しかしその部分は実は続く「デス・プルーフ」が担当していたのでした。

(続く)

サブウェイ・パニック

サブウェイ・パニックサブウェイ・パニック
(2006/01/25)
ウォルター・マッソー

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70年代に量産された良質のクライムサスペンスの中でも屈指の完成度を誇る「サブウェイ・パニック」をいよいよ紹介したいと思います。監督はジョセフ・サージェント。間違いなく彼の生涯の中でも最高傑作でしょう。

この映画はよく月曜ロードショーでやっていた記憶があります。まだ幼い私は犯人達がヒゲのお面をつけて同じような顔になっていたり、主役のウォルター・マッソーの風貌からこれをコメディと勘違いしてさわりだけ観た覚えがあります。もちろんコメディタッチは随所に見られるのですが、その奥には一本スジが通った男の映画であります。後にビデオ屋さんでこの映画を見つけて、ちゃんと観ておこうと借りたのですが、音楽に合わせて「THE TAKING OF PELHAM 123」(原題)とタイトルが出るところでもう痺れてしまいました。カッコよすぎます。

物語は簡単です。ペラム123という地下鉄が謎の集団にジャックされます。男たちは金を要求。ウォルター・マッソー演じる警部は、地下鉄なんかジャックしてどうやって逃げるつもりか、といぶかしみながらも、犯人グループと息詰まる駆け引きを繰り広げていきます。今にして見ると、「ダイ・ハード」等を見慣れた人には、この頭脳戦はかなり受け入れやすいと言えます。これは派手な爆発のない「ダイ・ハード」みたいなもので、犯人グループの計画、それを阻止しようとする鉄道側、警察の人員との息詰まるサスペンスは、脚本がよく練られていることもあって、最初から最後まで途切れることはありません。

さらに犯人グループのボスのロバート・ショーが最近のハリウッド映画のテロリスト風情なんかよりよっぽどカリスマ性のある悪役を演じています。ラストは、あっけないんですが、壮絶な死に様を見せます。

さらに言うならラストカットのウォルター・マッソーでしょう。さすがに最後の最後はネタバレを控えますが、逃げられたかと思った犯人を意外な手がかりから見つけた瞬間の、何とも言えないあの表情が最高です。とにかく全編通してよく出来ていて渋くてカッコいい映画で、70年代の映画でなんか面白いのないですかと聞かれたら、私はためらうことなくこの映画を推薦しています。
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