生まれてから今まで観てきた映画全部

タイトル通り、生まれてから今まで観てきた映画全部についての感想を述べたいと思います。

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ウルフガー

Author:ウルフガー
業界の末端に携わっている映画好きです。名前の由来は「ナイトホークス」より、ルトガー・ハウアー扮するテロリストから勝手に頂きました。

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恐怖の報酬

恐怖の報酬恐怖の報酬
(2006/10/27)
イヴ・モンタンシャルル・ヴァネル

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確かNHKの衛星放送で観たはずの「恐怖の報酬」です。この映画はリメイクされていますが、そちらではなくモノクロのオリジナルの方です。ちょっとこれは尋常でない迫力のとんでもない映画でした。もし劇場で観ていたら息苦しさのために失神したのではないかと思えるくらいです。

監督はアンリ・ジョルジュ・クルーゾーなのですが、よくもここまで徹底した映画が撮れたものです。有名な話なので皆さん知っているでしょうが、遠く離れた地で油田火災が起こり、それを消火するためのニトログリセリンを運ぶという危険な仕事に挑む男達の話です。何というシンプルさでしょう。その後のサスペンス映画のプロトタイプと言ってもいい構造です。この映画を見ればサスペンスを生む状況とは何か勉強できるはずなので、これから娯楽方面の映画作家を目指す人は必ず観るべき映画の一本でしょう。

メキシコの国境近くでしたでしょうか、映画の舞台は貧しい町から始まります。そこで一攫千金を夢見ている男がイヴ・モンタンです。そうですあの歌手で有名なあの人です。それが素晴らしい男臭い演技を見せたということでもこの映画は話題になりました。その恋人がヴェラ・クルーゾーで、名前から分かる通り監督の奥さんです。彼女は以前紹介した「悪魔のような女」にも出ていました。前半はこの町の描写が長く、息が詰まるような閉塞感が続きます。そして油田火災が起こり(この火災の描写も凄いのですが)、いよいよニトロ運搬の仕事に四人の男が名乗りを挙げて、映画が動き出します。

ちなみにイヴ・モンタンの役名がマリオで、仲間にルイージという男もいるので、スーパーマリオとかはここから名前を取ったのかも知れません。有名な話だったらすみません。で、先ほど映画が動き出すと言ったものの、ここからカタルシス満点かというとそうではありません。だってニトロを運ぶんですから乱暴な運転はできません。男達は二台のトラックに分かれて、あくまでゆっくりと慎重に運転します。それなのに、運命は彼らをあざわらうように障害の連続を用意するのです。

このハラハラ感と言ったら凄いものがあります。なまじ前半から続くリアリズムが徹底しているだけに、本当に爆発するのではないかという怖さがあります。安易なご都合主義が通用しない世界だという認識がすでに観客に植え付けられているからです。狭い道だとか、岩が道を塞いでいたり、有名な「スポンジの吊り橋」であったり、私が一番凄いと思ったのは原油の水たまりを越えるシーンです。迂回できないので、そのままトラックを突っ込ませ、立ち往生したので相棒がトラックを降りていろいろやっているうちに足を踏まれてしまうのです。しかしイヴ・モンタンは非情にもその足を踏み越えて水たまりを抜けます。このときの相棒役のシャルル・バネルの苦痛にあえぐ演技には本当に鬼気迫るものがあります。

数々の難関を乗り越えつつ、男達のドラマも描かれていきます。結構長い映画なのです。それでもう大丈夫かなと油断したころに、もう一台のトラックが爆発するタイミングの絶妙さも憎いです。しかもドカーンと爆発するのでなく、モンタンがタバコを吸おうと紙の上に葉を乗せて、さあ巻こうと思ったときにサッと風が吹いて葉が飛ばされるのです。それで顔を上げて前を向くと、黒煙がキノコ雲のように上がっているという、爆風というか衝撃波を先に見せるもの凄い演出で、びっくりしました。

映画はまあニトロ運搬は何とか成功するのですが、最後はまた強烈な結末が待っていて、なんでこうも非情な展開にするのかと言いたくなるくらいです。これが安易な映画だと作り手をくさすだけで終わるのですが、これだけ映像とドラマに説得力があるとそれも出来ず、ただただ打ちのめされてしまいます。それでいて本当に面白い娯楽作になっているのですから、ちょっと希有な映画と言えるでしょう。

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ついでにもう一つヒッチコック監督の映画いきましょう。「ダイヤルMを廻せ!」です。これは「暗くなるまで待って」でも有名なフレデリック・ノットの舞台劇が元になっています。しかも公開時は3D映画だったということです。しかし特に3Dでないと楽しめないような映画でなく、ちょっと意図が分からなかったりします(そう思って見ると、まあこれ見よがしに立体感を強調したカットが目立つ程度)。

これはテレビで深夜やっているのを見ました。どんな映画だかまるで予備知識がなかったので、正直前半はちょっと退屈しました。話が見えないのです。旦那が妻の不倫を男に話している。その話が長かった記憶があります。今見るとそれほど長くないかもしれません。とりあえず、早く刺激が欲しい年頃だったのでしょう。で、男に妻を殺すことを依頼して、ああそういう映画なのね、と納得します。

旦那はどこかのパーティーへ行き、アリバイ作りをしておいて、男に妻を襲わせ、物盗りか何かに殺されたように見せかける、という手筈です。しかも旦那の電話に出ている時にです。これなら誰からも疑われることはありません。ここで旦那が電話をかける時に、いきなり電話の内部の描写になって、もの凄くワクワクした記憶があります。ヒッチコックはこういう無生物の描写でサスペンスを高めるのが本当にうまいです。

で、結局男は妻に返り討ちにされてしまい、殺されてしまいます。旦那の計画は狂ったわけですが、ここからが面白い。妻は普通なら正当防衛で無罪となるところを、殺されたのは物盗りでなく、妻を脅迫していた男で、計画的に殺されたのだという情報を、旦那は警察に与えるのです(ここで妻が不倫をしているというのが生きてきます)。

さて妻は裁判にかけられるのですが、ここの裁判の描写が素晴しい。省略の神様ヒッチコックの独壇場です。なんと裁判でのやりとりを、女優さんのアップのみで済ませてしまいます。言葉で説明してもうまく伝わらないと思います。凄いのでぜひ見て下さい。

もちろんこのまま映画が終わるわけがありません。妻の無実を信じる不倫相手と警部は、旦那が怪しいと睨んで、ある罠をかけます。ここの描写も、まるで説明がないのに、罠を張られた旦那の心理がはたから見てて手に取るように分かって凄いです。罠にかかった旦那は見事逮捕され、妻は釈放されるのです。しかし妻が不倫をしていたことは事実でどうにも釈然としないものが残りますが、これを観た当時は私も若かったからかも知れません。今観たらまた違う感想を持つのかもしれません。

悪魔のような女

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今宵はあまりに傑作なサスペンス「悪魔のような女」をご紹介します。シャロン・ストーン主演のリメイクの方ではありません。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督のフランス映画です。この映画に触発されて、ヒッチコックが「サイコ」を撮ったという噂もあるほどです。これを私はたしかNHKの衛星放送で見たと思います。サスペンス特集とか何とか、あ思い出した。黒澤明の選ぶ名作みたいなシリーズでした。それでよほど凄いのだろうなと思って観た覚えがあります。いや夜中に1人で観たのですが、本当に身の毛のよだつ映画でした。なるべくなら予備知識なしで観て欲しいので、未見の方はできれば読まないで下さい。

まずボアロー&ナルスジャックの原作が素晴しい。この人たちは「めまい」の原作も書いています。あとマイナーなところでは「ボディパーツ」という映画の原作もそうです。横暴な男を、妻と愛人が結託して殺してしまおう、というアイデアがまず非凡です。男は寄宿学校の学長か何かでした。愛人はそこの教師だったと思います。二人は男を旅行に連れて行き、そこで風呂場で溺死させます。その旅行というのはアリバイ工作です。女二人の旅行のように装っておいて、帰ってきて男の死体を学校のプールに入れるのです。そうすれば男がプールで溺死したときは、二人は旅行中。アリバイ工作完了です。当然次の日から男の姿はなく、行方不明になるのですが、二人は男の居場所は知っています。気の弱い妻の方は、早く男の死体がプールにあると気付いてほしい。しかしわざとらしくプールを調べてとも言い出せない。この辺のジレンマが凄くサスペンスフルでハラハラします。

結局プールの水を抜いて、何かを探すことになります(ボールか鍵だったかな?)。そしてプールの水が全部抜かれたとき、妻はとんでもないものを目にします。プールから男の死体が消えていたのです。さてここからがサスペンスなのかホラーなのか、何が真実で何が嘘なのか、まるで分からなくなってきます。そのうち行方不明の男を追う探偵が現れ、二人の女を追いつめていきます。愛人はそうそうにトンズラし、妻だけが探偵の追求と男の陰に怯えていきます。集合写真に男の霊が写るところなど、本当に恐いですから1人で観ないでくださいね。

クライマックスでは妻の目の前に死んだはずの男が…、いやこれ以上は書けません。とにかく本当に心臓が止まるほど恐ろしいシーンが待ってます。さらにそれが終わってどんでん返しが三回ほど続きます。ホラーとしてもサスペンスとしてもミステリとしても一級の映画です(探偵の行動としてどうか?という部分はありますが)。

ちなみに妻役のヴェラ・クルーゾー(監督の奥さん)は数年後、浴室で本当に変死を遂げてしまったそうです。ああ、こんな文章を書いてしまって怖くて眠れなくなってしまった…。
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