生まれてから今まで観てきた映画全部

タイトル通り、生まれてから今まで観てきた映画全部についての感想を述べたいと思います。

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ウルフガー

Author:ウルフガー
業界の末端に携わっている映画好きです。名前の由来は「ナイトホークス」より、ルトガー・ハウアー扮するテロリストから勝手に頂きました。

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ウォンテッド

本日はティムール・ベクマンベトフ監督の「ウォンテッド」を観てきました。と言っても聞き慣れない監督さんかもしれませんから、モーガン・フリーマンとアンジェリーナ・ジョリーのドンパチやる映画です、と言えばああ予告観たことある、という人も多いかもしれません。しかし実は主演はジェームズ・マカヴォイというあまりアクション映画に出ないような地味な役者さんだったりします。

このマカヴォイ君が普段会社で女上司にいじめられているうだつの上がらないサラリーマンなわけですが、そんな嫌気のさすような日常にいきなり現れたのがアンジェリーナ・ジョリーで、あんたのお父さんは暗殺者だったのよ、と、そしてあんたにもその素質があるからうちらの仲間になりなさい、みたいなことを言うのです。そう言われてみれば冒頭でとんでもないアクションシーンがあり、オッサンがビルからビルへと飛び移って大暴れをした後、撃ち殺されてしまうのですが、そのオッサンがマカヴォイ君の行方不明のお父さんらしいのです。そしていきなり敵に襲われ、あれよあれよという間に殺し合いに巻き込まれていくわけですが、まあ早い話が「マトリックス」です。しかし後述しますが、この映画は「マトリックス」のエピゴーネンでありながら、「マトリックス」を全否定しているというちょっと変わった映画でもあります。

アンジェリーナの属する組織は「フラタニティ」という暗殺組織で1000年前から活動しているようです。最近その中からクロスという裏切り者が出て、仲間を次々に殺していっているらしいのです。マカヴォイ君は父の仇を討つために凄まじい特訓を受けるのでした。もちろんスカウトされたからには彼にも取り柄があるわけで、実はパニック障害を患っていたと思っていたのが、特異体質でアドレナリンの分泌量がハンパ無いので、超人的な反射スピードや身体能力を発揮できるというのです。さらに代々伝わる特殊な銃を、撃ち方を様々に工夫することによって弾丸を曲げることができるというのです。こういった理屈によって、まあ現実世界なのですがSFチックな戦闘が可能になりました。あとはアクションの連続かと思いきや、意外にマカヴォイ君の特訓に時間を割いていてじっくりした作りとなっています。

さて次の文章からいきなりネタバレ気味なことを書きますので、未見の人は気をつけてくださいね。途中まで観て私が「変わった映画だなあ」と思ったのは、裏切り者のクロスというのはどうも一人らしく、そいつを組織が倒す映画なのです。普通こういうものは暗殺組織から逃げた主人公が一人で組織と戦うというパターンが一般的です。と言うかそうでないと映画が盛り上がりません。敵は強大な方が面白いし、味方は少ない方がハラハラするからです。しかしこの映画は逆なのです。それもクロスという敵もアンジェリーナと互角くらい、修行をちょっとしたマカヴォイ君とも互角と言っては言い過ぎですが、ちょっと頑張れば勝てそうな感じです。これちゃんと盛り上がるのか? と思っていたらとんでもないどんでん返しが待っています。ああなるほどそういうことね、と納得しました。ただ前述の疑問を持っていたので、ビックリはできませんでした。

しかし読めるとは言えなかなか面白い展開です。退屈な日常を抜け出して組織にスカウトされてヒーローとして活躍して大成功だぜイエーイみたいな映画かと思いきや、そんな組織はまやかしであるというシニカルな物語なのです。しかも死んだ親父からのメッセージは、そんな生き方せずに真面目に日常を生きろというものですから、身も蓋もありません。この映画はひょっとしたら「マトリックス」から盛んに作られている現実逃避型のヒーロー像に終止符を打つものかもしれません。

肝心のアクションはと言うと、ありがちなスローとCGを使いながらも、あまり洗練されきっていない感じが逆に新鮮で面白いです。かなり残酷描写にこだわる監督さんらしく、やりすぎなくらいグロいのでそういうのが苦手な人には辛いかもしれません。私はちょっとポール・バーホーベン監督を連想しました。と言うか前半に出てくる女上司って多分「トータル・リコール」でシュワちゃんが変装した頭が爆発するおばちゃんですよね? 自信がないので断言できませんが、他にもいろいろバーホーベン監督へのリスペクトが見え隠れするのは気のせいでしょうか。

クライマックスの決着の着け方が、フリーマンとアンジェリーナの二人が目立ちすぎて主人公不在な感じがしたのがちょっと物足りなくはありますが、まあこのキャストからしたら仕方のないことなのでしょうね。その後、マカヴォイ君がきっちりケリを着けてくれますので、それでよしとしましょう。

なんかアクションだけに目が奪われがちですが、伏線の引き方やモノローグの使い方やミスリードの仕方がかなり大胆で、けっこう面白い仕掛けがありますので、複数回の鑑賞に耐えられる映画だと思います。あと続編は出来てほしくないですね。きっちり完結してますので。しかし私も30年くらい映画を観てきていまだにこういう映画が好きというのは自分でもどうかと思うのですが、まあ性分ですので死ぬまで変わらないでしょうね。

ハンコック

今日は「ハンコック」を観てきました。たった今帰ってきたところです。言い訳をするわけではないのですが、シネコンに行って、ちょうど時間に合うのがこの映画しかなかったのです。観てもいいかなと思っていたので、まあ観てみるかという感じだったのですが、いやーちょっと残念な感じの映画でした。

この映画に関しては、劇場でかかっていた予告しか観ていなかったのですが、ウィル・スミスが型破りなヒーローをやるちょっとコメディチックなSFアクションだと思っていました。で、まあ内容はそんな感じなのですが、結論から書くと、非常にお話が行き当たりばったりで表面的で、どうにも面白くなりませんでした。

アイデアはいいと思うのです。不真面目なヒーロー、しかも事件を解決するたびに周りに迷惑ばかりかけているという厄介者です。そんな奴が主人公だったら面白いだろうなあ、と誰かが思いついたのでしょうが、この映画はそれだけで終わっているような気がします。

普通映画というのは脚本を書いて、プロデューサーやら監督が面白そうだとオーケーを出して、それが完成してから撮影に入るものだと思うのです。ひょっとしたら時間がなくて脚本が出来上がらないうちに撮影しなければならない場合もあるのかもしれません。ひょっとしてこの映画もそうして作られたんじゃないか? と思えるくらい、観ていて話の方向性がどんどん変わっていくのです。

私はシャマラン監督の映画が好きというだけあって、映画の内容が期待と違っていてもかなりフレキシブルに気持ちを切り替えてついていく自信があったのですが、この映画にはついていけませんでした。それでも2回ほどは気持ちを切り替えたのです。でも途中で置いてけぼりにされてしまいました。

まずハンコックが冒頭で酔っぱらいながら型破りな手段で強盗を捕まえます。いろんなものをぶち壊しながらです。ここらあたりはちょっと面白いです。それで市民たちに非難されるのですが、この辺りはアメリカのおかしなところをカリカチュアしているようで、「ああ、黒人であるウィル・スミスの個性を利用してその辺りを風刺するブラックコメディをやりたいのだな」と思っていたのですが、そういう意図ではなかったようです。映画は本当にハンコックが悪いのだとして、彼が心を入れ替えて本当のヒーローとしてどう更生していくかという内容になっていきます。

広告代理店か何かの社員なのでしょうか、レイという男と知り合って、ハンコックは彼の提案でみんなに謝り、刑務所に入ります。でもハンコック自身にどういう心境の変化があったか分からないうちに、事件が起きて呼び出され、新コスチュームで活躍します。普通ならここで凄いカタルシスを感じたいのに、全てが突発的なのでいまいち盛り上がりません。

で何とか強盗も捕まえてハンコックはヒーローとして認められるのですが、ここまでで映画の半分くらいです。その後どうなるかと言うと、レイの妻が実はハンコックと同じようなスーパーヒーローだったと分かり、何故かこの二人の戦いになっていきます。まあサプライズとしてはなかなかいいのですが、その設定とかが後付けというか、正直何も考えてないでしょ? と聞きたくなるくらいいい加減です。それも全部セリフで説明されるので、これを面白がれというのが無理です。で、ハンコックは記憶喪失なのですが、もう何千年も生きており、以前その女と恋人だったとか何とか…、それでレイと三角関係でドラマ的に盛り上げるのかと思いきや、別にそうなるわけでもなく、ハンコックが撃たれて病院送りになったり、この辺りから何をやりたいのか正直分かりませんでした。書き忘れましたけどレイの奥さんというのはシャーリーズ・セロンさんです。ひょっとして彼女に見せ場を与えるためにこういう展開にしたわけではないでしょうけど…。

好みが合わなくて楽しめなかったというのとは違うのです。正直ハリウッド映画でこのクラスの役者さんが出ていて、これだけのお金がかけられている作品で、こんなにいろいろ失敗している映画は珍しいと思います。明らかにどこかで計算違いが起こっています。作った人たちもこんなはずではなかったと思っているのではないでしょうか。これでうまくいったと思っているのなら目も当てられません。

とにかく私は観客として面白い映画が観たいのです。レイと出会ったり、その妻が昔の恋人だったり、ハンコックが服役したときに銀行強盗があったりという、そういうことが全部偶然なのでは全く話に入っていけません。こっちはもっとハラハラしたいのです。ハンコックが撃たれて重傷を負ってから、「私たちが近づくと力が失われる」と言われても困ります(しかもその割にはさんざんスーパーパワーで戦っていましたし)、最後の脱獄してきた銀行強盗たちも、ハンコックが傷を負ったのをニュースで知ってから「今なら殺せる」と脱獄してきてくれないと、こっちはハラハラできません。そもそもそういうシーンがないので、不死身であるはずのハンコックをどうやって殺そうと思って脱獄してきたのかさっぱり分かりません。シャーリーズ・セロンさんも、正体を明かしてからは完全に悪役になってハンコックを今にも倒すところまで追いつめてから、やはり殺せずに助けてしまうということにしないとこっちは感動できません。レイにしても、いったんハンコックとは絶交だ、くらいにこじらせておかないと最後の危機を救うところで盛り上がれません。そういう観客の心をどういう方向に持っていくのかという演出が全くないのです。これだったらハンコックがヒーローとして認められる話だけにしぼって、ちゃんと作ってもらった方が良かったと思います。

なんだかいちいち文句を言っていたら長くなっていましたが、根本的な問題はハンコックというヒーローと対立する悪役が不在ということが原因なのかもしれません。もしはっきりとした悪役なしにヒーローものが作れるかという実験がしたかったのなら、「作れるが面白くはならない」という結果が得られて良かったね、と言うしかありません。

ダークナイト

ダークナイト 特別版ダークナイト 特別版
(2008/12/10)
クリスチャン・ベールマイケル・ケイン

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ついに観てきてしまいました。「ダークナイト」でございます。もちろん言わずと知れた「バットマン ビギンズ」の続編で、アメリカで公開して観客動員の新記録を打ち立てたとか何とか言う話が伝わってきたアレでございます。私も予告編は観たもののそれ以外の予備知識は一切入れずに本日劇場へ行ってきたわけですが、まだ観ていない方はここで読むのを止めて下さい。全くネタバレ無しで観てもらいたいのと、私は今回大絶賛しますので、それによって期待しすぎて、「それほどでも無かったじゃん」ということが無いように、です。

今回の敵はヒース・レジャー扮するジョーカーです。本当に惜しい人を亡くしました。改めてご冥福をお祈りします。そのジョーカー一味が銀行強盗を働くオープニングがなかなか面白いです。手下など使い捨てで、手下同士も互いに信頼関係など無く、悪のルールというものすら持っていません。全く無秩序な集団です。そんな連中の犯罪がテンポよく描かれて一気に映画の中に引き込まれます。今回この「ルール」というものが一つのカギとなってきます。

その銀行強盗を発端とし、マフィアたちの資金を隠した銀行が警察にばれ、検事のハービー・デントがマフィアたちを告発しようとし、いろいろなことが起こっていくうちに、元はと言えばバットマンが悪いという結論に達し、ジョーカーがバットマン殺しを請け負います。

このジョーカーというキャラクターが実に不気味です。ティム・バートン版の「バットマン」ではジャック・ニコルソンがマンガっぽく演じていましたが、今回はもっとリアルです。このくらいの傷がある人や、メイクをしている人は現実にいそうです。しかし見た目が現実的でありながら、その言動はあり得ないようなイカれたキャラクターになっています。ただキレた演技をしているだけではありません。うまく説明できないのですが、一人だけ別世界の人間のようです。この映画に出てくるキャラクターの中で一人だけ行動原理が分かりません。もちろんそれが狙いなのですが、もう言葉とか論理が通じないので、憎むことさえ出来ない感じです。

しかし複雑なストーリーを実に見事に語る映画です。今あらすじを説明しようとして、めちゃめちゃ長くなりそうなので焦りました。本当はもっと盛りだくさんなのです。クリストファー・ノーラン監督はいつも手堅い演出に定評がある人ですが、今回も絶妙な編集で無駄な説明をギリギリまで省き、かと言って観客にはちゃんと筋が追えるようにシーンごとに細かな配慮がなされています。

またジャンル的にはヒーローものの映画であるにも関わらず、今回はそういったケレン味のある演出というものを徹底的に排除しています。普通だったらバットマンが登場する所は、音楽やもったいつけたカット割りで盛り上げたりするものですが、そんなのは一切ありません。普通に立っています。もちろんバットマンは闇に生きるヒーローですから、神出鬼没が売りなのですが、では逆にその謎めいたところを強調するかというとそうでもなく、カットが変わったら普通にいなくなっている、という感じです。本当に普通の人間がただ変わった格好をしているというだけなのです。原作からのファンの方はこの身も蓋もない描写をどう受け止めているか、興味深いところです。

本当にメインの筋だけを追って行きますが、ジョーカーはバットマンにマスクを取って正体を現すことを迫ります。さもなくば人を殺し続けると脅迫するのです。バットマンは悩んだ末、要求を飲むことを決意するのですが、ハービー・デントは「バットマンはこの町に必要だ」と考え、自分がバットマンだと記者会見で発表して、ジョーカーに狙われてしまいます。

デントの乗った護送車を追うカーチェイスは中盤の大きな見せ場です。ここでも盛り上げるためのノリノリの音楽などかからないところがいいです。そしてバットモービルに乗ったバットマンが登場。しかしバットモービルはジョーカーの撃ったバズーカ砲で吹っ飛んでしまいます。ここで私は「ああ、やられてしまった。また仕切り直しだな」とガックリしてしまいました。完全に動かなくなり緊急脱出装置が作動します。そこの演出で妙に時間をかけるなと思ったら、なんとバットモービルからバイクが飛び出してきて、それに乗ったバットマンが再びジョーカーたちを追い始めるのです。このくだりはもう興奮のあまり身震いしてしまいました。もし予告であのバイクのような乗り物を観ていなかったら失禁してしまっていたかも知れません。こんなにアクション映画を観ていてワクワクしたのは、ひょっとしたら学生時代に観た「エイリアン2」以来かもしれません。

その後、バットマンとジョーカーが対決し、いったん決着がつくのですが、まだまだ映画は全然続くのです。ここまででかなり長くなったので、あとは観てのお楽しみと言うことで伏せておきましょう(観てない人が読んでるかは疑問ですが)。

しかしこれバットマンが出ていなかったら完全に単なるサイコサスペンスなんですよね。もう人間の悪意というか醜いところがこれでもかというくらい出てきますので、観ていて陰鬱な気持ちになってきます。直接のグロ描写というのは後半に出てくるあるキャラクターの外見を除いてほとんどないのですが、あまりに残酷なストーリーにPG-13では足りないような気もします。こんなの子供に観せたら確実にトラウマになるのではないでしょうか。

しかし後半の船のくだりとか、人間の善良な部分を信じる場面もありますし、ちょっとご都合主義かなとも思ったのですが、あそこで爆発していたら本当にやり切れない映画になったでしょうから、観ている私としてはちょっと救われました。

かなり長尺な映画なのですけど、もっと観ていたいと思わされる映画です。私自身、学生時代ならいざ知らず、今になってこんなにワクワクさせられる映画に出会えるとは思ってもいませんでした。長々と書きましたが、なんだか書きたかったことの半分も書けなかった気がします。全然この映画の面白さを伝えることが出来ませんでした。

断言しますが、これは名作です。
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