たどんとちくわ
![]() | たどんとちくわ (2007/12/07) 役所広司真田広之 商品詳細を見る |
驚いてしまいました。たった今ネットで市川準監督の訃報を知りました。59歳だったそうです。早すぎます。私はこの方の作品をそんなにたくさん観ているわけではないのですが、非常に品のいい真面目な映画を撮る方だという印象があります。ご冥福をお祈りします。
実はこの方のフィルモグラフィーの中では異色作ではないかと思える「たどんとちくわ」の感想を書きたいと思います。役所広司さん真田広之さん主演の何と言ったらいいのでしょう。サイコサスペンスとか表現されてもいますが、私はこれはブラックコメディと言うのが一番しっくりくるかなと思います。
お話は二部構成になっていまして、まあ役所さん真田さんがそれぞれ主演でそれぞれ狂っていくという筋書きです。身も蓋もない書き方になってしまってすみません。
まず役所さん扮するタクシー運転手が現れます。タクシー運転手と言えばストレスの溜まる仕事の代表格のようなもので、そのストレスからだんだん狂気に染まっていくという映画は何本も作られています。この映画でのきっかけはお客さんの根津陣八さんとの世間話の中で、根津さんが自分はたどん屋であると嘘をついたという些細なことです。いきなりキレ始める役所さんはダッシュボードから銃を取り出して、本当にたどん屋だったらたどん作ってみろ、と河原に行って泥でたどんを作らせます。非常に理不尽でメチャクチャな話なんですが、二人の演技が凄いので目が離せません。ここでは特に役所さんが根津さんに「作ってろ」と命令だけしてその場を離れるシーンが最高に笑えます。銃を突きつけられて無理矢理作らされてるのに席を外して作ってろはないだろ、と思うのですが、律儀に作っている根津さんが笑えます。
実は私はこの前半の方がお気に入りで、後半はちょっと退屈したと言っては言い過ぎですが、イマイチな感じがしました。真田さんが小説家の役で、スランプに陥っていたのでしょうか、飲み歩いているうちにある店でキレて超バイオレンスを展開するというお話です。
映像的には後半の話の方が派手です。クライマックスは大虐殺になるのですが、そこは品のいい市川監督のこと、血ではなく色とりどりのペンキみたいな液体をぶちまけることでスプラッタシーンを不快にならないように描いています。これは真田さんがそれまでも幻覚を観ていたから自然に妄想世界に突入したように見えて違和感はありません。さらに虐殺が終わって外をさまよい歩く真田さんの服は真っ赤な血に染まっているので、実際に虐殺があったことは確かです。そうなるとリアルに描かれなかった分だけいろいろ想像して余計に身の毛がよだつ恐怖を味わえて、この辺りは本当によく計算された演出だと思います。
しかし今自分の書いた文章を読み直してみたのですが、これでは観てない人にとってはどんな映画だかさっぱり分かりませんね…。これ観てもらわないとやっぱり伝わらないんですよ。言い訳をするようですが、説明するのが非常に難しい映画なのです。なかなか面白い映画ですので機会があったら是非ご覧いただきたいと思います。



